今回読んだ論文「猫の早期発症歯肉炎および歯周炎の臨床的・放射線学的・組織病理学的特徴」
Clinical, radiographic and histopathologic features of early-onset gingivitis and periodontitis in cats (1997–2022)
早期発症歯肉炎(EOG)とは
早期発症歯肉炎(EOG)は、生後6~8か月頃から若齢期にかけて発症する歯肉の炎症を指します。
- 著しい歯肉の発赤、腫脹、出血を示すことがある
- 原因や正確な有病率は不明
- 成長とともに自然に改善する例もある一方、進行性の歯周病へ移行する症例も存在します
本研究では、EOGが侵襲性歯周炎(AP)や猫慢性歯肉口内炎(FCGS)様病変へ進行する可能性にも注目しています。
研究の概要
- 対象:27頭の猫(2歳以下で歯肉炎を発症)
- 研究デザイン:後ろ向き記述研究
- 評価内容:
- 覚醒下の口腔検査
- 全身麻酔下での詳細な口腔検査および歯科レントゲン
- 一部症例で歯肉組織の組織病理学的評価
重要な発見 ①覚醒下検査では歯周病が見逃されやすい
- 覚醒下の口腔検査で歯周病が確認された猫:30%
- 麻酔下レントゲン検査で中等度~重度の歯周病が確認された猫:78%
つまり、覚醒下の視診だけでは多くの歯周病が検出されていませんでした。
重要な発見 ②放射線学的に認められた特徴
歯科レントゲン検査では、約9割の猫に歯周炎の所見が認められました。
代表的な所見として:
- 水平的な骨吸収
- 欠損歯
- 中等度~重度(ステージ3~4)の歯周病
が高頻度に確認されました。
若齢であっても、すでに進行した歯周病が存在している症例が多いことが示されています。
重要な発見 ③組織病理学的特徴
歯肉組織を評価した症例では、
- 中等度~重度の炎症
- 好中球性およびリンパ形質細胞性炎症
- びらん~潰瘍性の変化
が多く認められました。
これは、慢性的かつ活動性の高い炎症状態を示唆する所見です。
重要な発見 ④疾患の進行と予後
追跡調査の結果:
- 約4分の1の猫が侵襲性歯周炎(AP)へ進行
- 一部の猫でFCGS様病変を発症
また、初回治療後2週間の再評価で十分な改善が見られなかった場合、疾患進行と有意に関連していました(P = 0.004)。
この研究から示唆されること
- 若齢猫の重度歯肉炎は「一過性」とは限らない
- 覚醒下検査だけでは病変を過小評価する可能性が高い
- 麻酔下での詳細な評価と歯科レントゲン検査が重要
- 初期治療後の早期再評価は、予後を判断する上で有用
- 症例によっては、将来的に抜歯を含む治療が必要となる可能性があるため、長期的な視点での説明とモニタリングが推奨される
まとめ
- 早期発症歯肉炎は、若齢猫に見られるが進行性となる可能性がある
- 覚醒下検査では歯周病が見逃されやすい
- レントゲン検査により、高頻度で中等度~重度歯周病が確認された
- 一部症例では侵襲性歯周炎やFCGS様病変へ進行
- 早期発見と適切な評価、継続的なフォローアップが重要
この論文は、「若いから大丈夫」と考えがちな猫の歯肉炎が、実は重要な臨床的意味を持つ可能性を示しています。
論文情報
- タイトル:Clinical, radiographic and histopathologic features of early-onset gingivitis and periodontitis in cats (1997–2022)
- 著者: Maria Soltero-Rivera, Natalia Vapniarsky, Iris Rivas, Boaz Arzi
- 掲載誌: Journal of Feline Medicine and Surgery
- 発表年: 2023
- DOI: 10.1177/1098612X231158154
- 論文タイプ: オリジナル研究(疫学調査論文)
注意事項
- この記事は学術論文をもとに作成したものであり、個人の解釈を含みます
- 研究は英国の一次獣医療データに基づいており、全ての猫に一般化できるわけではありません
- 個別の症例については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください
- ブログ著者は獣医療行為を行うものではありません
※本記事はオリジナル研究論文を基にした要約です。原著論文の利用については、出版社(SAGE Publications)の規約をご確認ください。

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