【歯科医師の苦悩】犬猫に「毎日歯磨き」は正解か?

基礎知識編

こんにちは。「ORAL PET LIFE」管理人のしゅんです。

前回の記事では、犬猫の歯周病の衝撃的な蔓延率と、歯石形成のスピードについて学びました。

あの「犬の歯石化が3-5日で起きる」事実は、皆さんも驚かれたのではないでしょうか?

さて、今回のテーマは予防の要である「犬猫の歯磨きをどのように実施するべきか」を一緒に考えていきたいと思います!


基本原則:毎日歯磨きがベスト、でもストレスは大敵

教科書やAVMAガイドラインによると、毎日1回の歯磨きが理想的とされています。

なぜなら、プラーク(生きた細菌の塊)が歯石に変わるスピードが速く(犬: 3-5日、猫: 7日)、歯石に変わると手技が難しいから。

但し、ここで考えなくてはならないのが、「教科書的に正しいことが、臨床でも実践すべき正しさなのか」ということ。


犬猫は歯磨きを「習慣」として理解できない

野生時代(狩猟採集期)の犬の祖先は、固い骨や肉の塊を噛むことで自然に歯を掃除(自浄作用)していました。オオカミの化石研究(例: Ungarの進化論文)でも、歯石はあっても重症歯周病が少なかったのは、この摩擦のおかげもあります。

一方、現代のペットフードは柔らかく嗜好性が高い(おやつ多め)ので、自浄作用が激減。歯周病が80多くの犬に蔓延するんです。


歯磨きはストレスを最小限に!

押さえつけないで歯磨きを行うことは不可能ですが、その中で押さえつける時間は短くしたり、好みにあった歯磨き粉を使用する必要があります。何なら、最初は何もつけない。

人間の歯科でも「子どもの歯磨きは楽しく」が鉄則ですが、ペットは言葉が通じない分、忍耐が必要です。

ちなみに人間の子どもであっても、歯医者の椅子(ユニット)に座らないで逃げ回る子もいますし、例え歯磨きだけであっても怖がってやらせてくれないこともあります。


最初から完璧は目指さない

人間であっても、何をされるか分からないと最初は怖いものです。
そのため、「系統的脱感作法」を意識する必要があります。

これは恐怖や不安を感じない程度の「弱い刺激」から始めて、徐々に刺激を強くしていき、最終的に目的の行動(歯磨き)を受け入れさせる方法です。

例えば、以下のようにステップを分け、何週間と時間をかけて進めていきます。

①歯磨き粉などを付けずに、歯ブラシを前歯に当ててみる。

②前歯から徐々に奥歯も触ってみる。

③歯磨き粉を付けてみる

当然歯ブラシではなく、歯磨きシートでもいいですし、ステップをさらに細かくしても良いです。


歯磨きとおやつ(ご褒美)はセット

心理学には拮抗条件付けという言葉があります。
これは「悪いイメージを良いイメージで上書きすること」を意味します。

「歯ブラシが出た瞬間、最高のおやつが出る!」
というルールを作るのです。

こうすることによって

「歯ブラシ=嫌なこと」という脳内の回路を、
「歯ブラシ=おいしいこと」という回路に配線し直します。


コラム 「犬の予防スタイル」

うちのワンコたちを見てみると、うい(プードル)は歯石が多く、すい(チワックス)はほとんど歯石がありません。

歯磨きも大切ですが、結局のところ「おもちゃでよく遊ぶかどうか」が重要だと思います。

すいはなんでも噛む子で、ロープトイの引っ張り合いが大好きですが、ういはあまり遊びません。


ロープトイや、へちまのおもちゃを噛むことによって、自浄作用を期待する。これが犬にとっては一番の予防ライフスタイルなんだと思います。

(すいの口腔内写真+歯科用プラークチェックライト)

(ういの口腔内写真+歯科用プラークチェックライト)

※左側の写真は、「歯科用のプラークチェックライト」を使って撮影したものです。

肉眼では白くて見えにくいプラーク(細菌の塊)ですが、特殊な光を当てると、細菌が出す代謝物がピンク色に光ります

ご覧の通り、一見きれいな歯でも、歯の根元にはこんなに細菌の塊が隠れているんです・・・。怖いですよね。

(※撮影にあたっては、目に光が入らないよう十分に配慮し、短時間で行っています。ご家庭のブラックライト等でのマネは目に悪いのでお控えくださいね!)


次回は今回の記事を踏まえて、どのように歯磨きを実践するべきかを考えていきたいと思います!

※この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、獣医療の専門的なアドバイスではありません。ペットの口腔ケアや健康問題については、必ず獣医師にご相談ください

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